- クリエイターインタビュー
プロダクトデザイナー安積 伸さん
イギリスに拠点を構え、国際的に活躍する安積伸さん。プロダクト、ファニチャー、空間など、さまざまなデザインを手がけ、世界中に発信している。安積さんのデザインは、シンプルでシャープ、それでいてどこか肩の力が抜けた暖かみがある。今回のプロジェクトで安積さんが手がけたリボンマグネットのデザインは、国際的に活躍する安積さんらしい、万国旗をイメージソースとするもので、世界中を繋ぐ人々の絆を感じさせる“暖かみ”が溢れている。
(東京~ロンドンをSkypeで繋ぎ、インタビューしました)
安積さん、こんにちは! ロンドンの今日の天気はどうですか?
ロンドンの天気はこんな感じですよ(PCのカメラを窓の方に向ける)。割といい天気。事務所はこんな感じかな(PCのカメラを事務所内に向ける)。
スタッフの方が何人かいらっしゃいますね。ロンドンと日本でこうやって話をしているのは、ちょっと不思議な気持ちです。さて改めまして、今回は「リボンマグネット×トップクリエイターズ・チャリティ・プロジェクト」に参加いただき、ありがとうございました。いままでになかった素敵なリボンをデザインしていただき感謝しています。安積さんは、リボンマグネットのことを以前からご存知でしたか?
いえ、リボンマグネットのことは知りませんでした。リボンとチャリティの結びつきは、比較的良く見かけますが、マグネット型のものは知らなかったですね。
リボンマグネットはクルマに貼って社会貢献の意思を表示するアイテムとしてアメリカから始まったのですが、さすがにイギリスではリボンマグネットを貼ったクルマを見かけることはないですよね。
そうですね~。リボンマグネットは見ないな。
今回、このプロジェクトに参加してみようと思った気持ちは、どういうところにあったのでしょうか?
自分のいつものデザインワークとは違うところで、デザイナーとして社会貢献したいという気持ちが常々あったんです。いろいろなデザインイベントに誘っていただくことも多いのですが、なかには本当に“単なるイベント”というものもあって、自分に対するフィードバックも世の中に対するフィードバックもないイベントだったりする。そういうときは参加していても、なんだか空しいんです。だから今回のプロジェクトのような、社会にフィードバックできるデザインイベントなら、ぜひ参加したいと思いました。グラフィックはもともと僕の専門分野ではないですけど、まぁ何かできるんじゃないかな、と思って参加しました。
イギリスでもチャリティイベントは多いんですか?
けっこうありますよ、デザイナーが参加するチャリティイベントも多く、フェアトレードやチャイルドケアのためのチャリティイベントなど、僕もいくつか参加しました。
日本よりも海外の方がチャリティは活発ですよね。
そうですよね。日本よりも構えずにチャリティができる雰囲気はありますよね。日本では「人のために」ということにどうしても構えてしまうけど、そういう意味では海外の方が気軽に「人のために」ということに参加できる。それはやっぱりいい環境だと思います。
安積さんが手がけたリボンマグネットのデザイン意図を教えて下さい。
僕は海外で仕事をしていますから、海外のいろいろな国の人たちと助け合いながら生きている。人との結びつき、信頼関係なくしては、いまの自分はあり得ないと思っています。この思いから派生して、国際協力を高める、国境を越えて人々が結びつくという意味を込めて、リボンマグネットをデザインしたいと思いました。僕のデザインの源は万国旗なんですが、各国の旗の色を抽出して、その色の並びを均一の線にしました。つまり『万国旗をひとつのリボンで束ねよう!』というデザインなのです。
とても素敵なデザインで、本当に嬉しく思います。このデザインはすぐ浮かんだアイデアですか? 結構悩んで時間をかけて出てきたアイデアですか?
しばらく悩みました(笑)! いいネタないかな~って、しばらく悩んでましたよ!
そうですか(笑)。本当にありがとうございます。安積さんは、デザインを考える際、時間をかけて悩み生み出すタイプですか? パッと閃くタイプですか?
結構悩むタイプですね。ぼんやりしていても出てこないですね。情報収集して、そのあとグッと収束して、抽出していくタイプかな。このリボンマグネットも、ぼんやり考えていた段階から、一度グッと収束して出てきたアイデアですね。
安積さんはプロダクトデザイナーなのでグラフィックが専門ではありませんが、今回のリボンマグネットのデザインは難しかったですか?
そうだな〜、確かに難しかったなぁ(笑)。
ちなみにこのリボンマグネットのデザインには、何ヶ国の色が入っているのですか? ずいぶんたくさんの色を使っているように見えますが…。
全部で22ヶ国です。
22ヶ国ですか! でも、もっとたくさんの国の色が使われているような気もしますね。世界中の国の中から、22ヶ国をセレクトしたポイントは、どこだったんでしょう?
純粋に色です(笑)! まとめたときに色バランスのいい国を集めました。もちろん、ヨーロッパだけやアジアだけなど、選んだ地域がひとつの場所に固まらないように、世界中の地域から選ぶ工夫はしましたけどね。
国旗の色をデザインソースにするアイデアが、世界で活躍されている安積さんらしくて素敵だなと思ったのですが、安積さんは普段から、各国の国旗の色を意識しているのですか?
そういうわけではないんですが、実は僕、地図帳が好きなんですよ。地図帳に必ず国旗のページがあるじゃないですか。そのページを見るのが好きなんです。世界中あちこち出張することも多いので、会社に世界地図帳を置いているのですが、出先で会った、田舎から出てきた若い子に「出身はどこ?」なんて聞いて、事務所に帰ってきて地図帳で調べたりする。これが楽しいんだな(笑)。
なるほど(笑)。今回のデザインは、普段見ていた地図帳が大いに役立ったというわけですね。さて、安積さんがデザインしたこのリボンマグネット、どんな人に使って欲しいという思いはありますか?
そうですね。デザインは製品として世に出てしまったら、僕のものというより使う人のものなので、買ってくれた方に好きに使ってもらうのが一番ありがたいですね。僕のリボンマグネットを選んでくれた人に、その使い方を委ねたいと思っています。
安積さんのリボンマグネットを購入した際の寄付先は「国境なき医師団」ですが、この団体を寄付先とした意図を教えて下さい。
寄付先を「国境なき医師団」に決めた理由はふたつあります。ひとつは「国際貢献をしている団体」にしたいという理由です。僕自身、海外で仕事をしている人間ですし、同じように国際的に活動している団体を寄付先にしたいという思いがあったもので……。ふたつめの理由は、僕の実家の家業にあります。実は祖父の代から、母と兄も眼科の医者でして、まぁ、僕だけ外れちゃったんですけど(笑)。それで“実家の家業”に関係する医者という部分と海外での活動という部分を考えて、「国境なき医師団」を選んだのです。
なるほど、そうだったんですか! 安積さんのご家族はお医者さんだったんですね。安積さんだけデザイナーさんに……。
まぁ、そうですね(笑)。
以前から「国境なき医師団」とは交流があったんですか?
いえ、そんなことはないですよ。ただ、名前は知っていましたし、素晴らしい生き方だなと、気になってはいました。
安積さんは現在、イギリスに住んでいらっしゃいますが、日本の社会貢献の現状をどう見ていますか?
そうですね、日本だと社会貢献というとどうしても滅私奉公的な雰囲気があって、身を削って参加しなくてはいけない敷居の高さというか、関わり出したら大変、というニュアンスがあるんですけど、海外は無理のない範囲で参加できるチャリティの機会が多い気がしますね。日本でも無理なく参加できるチャリティの機会が広まるといいのですが……。
最後に、今回のプロジェクトに期待されることがあればぜひ!
こういうチャリティのイベントで、デザイナーが一堂に会するのは素敵なことだと思いますから、継続的に活動して欲しいと思います。一回のイベントに終わらずに、チャリティの提示を世の中に発信し続けていければいいと思います。
ありがとうございました。今後のご活躍も期待していますね!
安積伸さんが初めて手がけた“白モノ”家電、ティファールの『コンパクトIH』。昨今人気の高い卓上IH調理器をデザインするにあたり、テカリのある黒とAV機器を彷彿させる緑のインジケーションを使って、高級感を演出した。価格2万1000円。

